No.22

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母体は、なぜ、有害物質から胎児を守れないのか団まりな(大阪市立大学理学理学部生物学教室)なぜ有害物質は体の中に入ってくるのか

  生物の体は開放系

一番の根本は、私たち生物の体が開放系という開かれた系であるということです。川には常に違う水が流れているけれども、川というものはちゃんととらえられる。我々もそれと同じなのです。3ヶ月ぐらいで体の分子はみな違ってしまいますが、常に同じ物質がこの体を通り過ぎていくために、外から見て同じ人がということがわかる、そういうシステムです。

人間の体は約60兆個の細胞が集まって出来ています。生命は、全部この細胞の中にあります。物質が体を通過するということは、その物質が必ず細胞の中に入って、図1に示した複雑な化学反応経路のどれかを通って次つぎと変形し、やがて、そこから出ていくということです。

   体内に何を取りこむかは厳密に決まっている

体内に何を取りこむかは、細胞膜に埋め込まれた輸送タンパク質によって厳密に決められています。輸送タンパク質なしに細胞膜を通過できるのは、水とか酸素などの小さな分子だけです。

私たちの体は全面が細胞で覆われており、その内側で起こっていることは、一つの細胞で起きていることと同じです。

体の湿重量の99%は炭素と水素、窒素、酸素で占められています。この地球上の物質から考えると非常に偏ったものを取り入れていることになります。非常に選り好みの激しい物の使い方をしているわけです。

生物の体を作っている物質を有機物といいます。自然界にはメタンなどの非常に小さな有機物はありましたが、大きな有機物は生物が作りました。生物が、炭素という非常に反応性のいい、使い勝手のよい元素を利用しながら、おびただしい質と数の化学反応によって、少しずつ複雑な物質を作り出してきたのです。

    人間が自然界にはない変な物質を作った

細胞は有用な物質だけを取り入れるシステムを作りあげてきましたが、そこへ人間が自然界にはない変な物質を作ったわけです。こういう物質も細胞の認識機構をだませば体内に入ることができます。そしていったん中に入ってしまうと、不要になった物質を排出する酵素がその物質を認識してくれなければ、永久に体内に止まってしまう。だから有害物質かどうかは、細胞内で起こっている化学反応の文脈の中で決まってきます。

一つの分子に有害物質が取りつくと、化学反応が次々とやられていき、影響が拡大されていきます。物質のやりとりのバランスが崩れれば、細胞は死んでしまいます。正常な化学反応を邪魔するような物質は、すべて有害ということになります。

農薬のターゲットは害虫です。虫も、人間も同じ代謝のメカニズムで暮らしています。農薬はこれを乱すことを指標に作られた物質ですから、我々の細胞にとってもいいはずは絶対にないのです。私たちは今まさに、人体実験の材料にされているのです。

母体は、なぜ、有害物質から胎児から守れないのか

    次世代の体はもともと卵という形で存在

次世代の体は、もともと卵という形で存在しはじめたものです。ヒトデやウニといった、非常に小さな卵でも、ヒトの体細胞(直径10ミクロン)の五千倍もの大きさがあります。なぜ卵が巨大かというと、親が子どもにものすごくたくさんの栄養を持たせて放出するからなのです。

哺乳類の進化とともに、それまでの閉じた卵から、外と栄養をやり取りできる開かれた胚がはじめて出現しました。親がおなかの中の子どもにどんどん栄養を与えることができるようになり、大きく生み出すことができるようになったために、脳なども非常に発達した子を作ることができるようになったのです。

    母と子の物質のやりとりのメカニズム

子は生物としては他人ですから、母親も体の中に受け入れることは画期的なことで、きちんとしたメカニズムがないとできません。あくまでも血液を隔離したまま、栄養を与える工夫が実現されています。しかし、母と子の物質のやりとりのメカニズムは、細胞が物を取りこむメカニズムと何も変わりません。

結局、母親の細胞が見分けられなかったようなものは、子どもの細胞も見分けられない。親が取りこんだ物は、どうしても子どもにまで行ってしまう。これが、母体が胎児を有害物質から守れない理由です。

この文章は、96年主婦民主クラブが行った連続講座『これでいいのか?科学技術と化学物質のあふれる社会』の中から載せました。この講座は、「いのちの連鎖を切る合成界面活性剤」など、注目すべき重要な問題を取りあげ記録しています。子どもを産み育てる女性に一読してほしい小冊子です。700円。問合せはTEL03(3402)3244主婦民主クラブまで。阿部文子

個々の黒丸は特定の化学分子を示しています。その内のどの一つに余分なものがついても(=変成しても)、反応はそこで止まってしまいます。適当に一つの丸を選んで、それがおかしくなった場合にどこまで影響が広がるか、たどってみて下さい。