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最終更新日 2023年02月10日




インタビュー特集 遺伝子組換え作物
(生活クラブ生協「生活と自治」2003年2月号より)

我、モンサントとかく闘えり

 カナダ中西部のカスカチュワン州ブルーノで、妻と二人、ナタネ、小麦などの農場を営むパーシー・シュマイザーさんは、自分の地域にあった種子を開発し、自らもその種子を育ててきた。
 そのシュマイザーさんの農園で、モンサント社が特許をもつ除草剤耐性ナタネ(RR【ラウンドアップレディ】ナタネ)が栽培されていたとして、同社は98年、シュマイザーさんを特許権侵害で訴えた。シュマイザーさんは、RRナタネの種子を1度も植えたことがない、種子汚染が原因だ、と主張しているにもかかわらず、98年の第一審と2002年の控訴審で敗訴。現在この訴訟は最高裁に持ち込まれている。
 なぜ彼は、たった一人で巨大企業モンサントと闘っているのか。ブルーノの自宅で、インタビューした。


半世紀に渡って種子を守ってきた

 私と妻は,半世紀にわたってナタネを育て、種子を開発してきました。
 97年、除草剤のラウンドアップを道路と電柱の間に巻いたところ、何本かのナタネが枯れませんでした。電柱のまわりの、作物が育てられない場所に、15年くらい前からラウンドアップを巻いてきたので、自然にタイセイを持ったのだろうとその時は思ったし、特許というものがあることを知りませんでした。
 裁判官は控訴審の判決の中で「モンサントの遺伝子が作物にいかにして入り込んだかは問題ではない」と言っています。
 カナダではすでに二つの作物――大豆とナタネが作れなくなりました。ほとんど全て汚染しているからです。

広がる種子の汚染

 遺伝子はいったん環境に放出されたら、囲い込むことはできないし、非GMとGMの共存はあり得ません。どうすれば風、鳥、動物、昆虫の動きを抑制することができるでしょう。緩衝地帯について50mとか150mとかいわれていますが、農民の立場から言えば冗談ではありません。
 有機農民の最も恐れているのはこの点です。ナタネはアブラナ科で、近縁種の植物(カブ、キャベツ、ブロッコリー等々)がたくさんあります。
 米国では、医療品用のGM作物による汚染が問題化しています。
 ザンビアなどアフリカ諸国は、GM食糧の援助を拒否していますが、援助された食物が種子として栽培され、汚染が起きれば、農民の選択の余地はなくなります。

モンサントのうそ

 96年、RRナタネはカナダ政府によって承認されました。当時,農民たちは、モンサントから、1.収量が上がる、2.農薬の使用量が減る、3.栄養価が高まる、といわれました。持続可能な農業を促進し、世界の飢える人々に食糧を与えるのだ、と。
 しかし、2,3年の後に実際に起こったことはこうです。1.収量の低下。米国でも農務省が、15%収量が落ちたと明かしました。2.品質の低下。遺伝子が組み込まれたことによって作物の構造が変わり、酸の含有量が上昇しました。三つめに、もっとも悪い事には、スーパー雑草の発生によって農薬の使用量が最低4〜6倍に増えています。ラウンドアップも2.4-Dも効かない。それでモンサントはより強力な農薬を開発しました。問題を自分で作っておきながら、その問題を解決するための農薬を開発しているのです。

モンサント・ポリスとコミュニティの崩壊

 モンサントは、「モンサント・ポリス」という独自の警察を組織し,農場で作物を盗んでは、検査して、農民を法廷に訴えているわけですが、農民が巨大企業と闘おうと思えば農場を失ってしまいます。私の立場もすでに4年前の法廷競争で25万ドル(約2000万円)を支払いました。こんな支出に農民が耐えられるでしょうか。モンサントはそれを知っているのです。有機農民たちがモンサントとアヴェンティスを相手取って集団訴訟を起しました。有機農民たちは、経済的損失を証明しなければなりません。モンサントはあらゆる法的手段を講じて訴訟を長引かせようとしています。
 かつて密告用の電話回線について、広告が出されていました。モンサントは法廷で求められ、私を密告した人の名前をあげましたが、彼も農民で元警察官。農業のない冬の間はモンサントに雇われて働いていました。
 法廷で私の側に立って証言した農民は全員、モンサントから手紙を受け取っています。ある農民はナタネを34エーカーしか栽培していないのに、140エーカーのRRナタネを育てているとライセンス料を要求されました。私たちは今、「恐怖の文化」という全く新しい文化に直面しています。モンサントから告発されるのではないか、手紙が来るのではという恐怖です。農民の女性が泣きながら電話をかけてきたことが何度もあります
 密告したモンサント・ポリスがあの隣人かもしれない、いや他の隣人かもしれない、ということになる。そのために私達は、コミュニティの崩壊に直面しています。私にしてみれば、これはモンサントがもたらしたものの中で、最悪です。


農民の種子が守る食料

 私が主張したいのは、農民の種子を守る権利が特許権によって奪われてはならない、ということです。もし今、農民が種子の開発を止めたら、今後二度と種子を開発したり、自分の種子を使ったり、隣人と交換したりできなくなります。私は、この地域の気候、土壌にあった種子を開発してきましたが、もし農民が種子の開発をやめると、多国籍企業にすべて握られてしまって、多国籍企業の種子、1種類しかなくなります。
 もう一つの危険なのは、原産地での原種の汚染です。もし1品種しか2品種しかなくなって、その品種に病気や災害が起こったらどうなるでしょう。
 モンサントの環境汚染の責任について3年前に集の裁判所に訴訟を起しました。責任問題については、州法の管轄です。03年初めには、この控訴は先に進めていきたいと思っています。

モンサントの責任を問う

 私のケースが世界的に有名になった理由は、あらゆる問題をはらんでいるからだと思います。生命特許の問題、知的所有権の問題、農民が自分の育てた種子を植えてもいいのかどうかという問題、発明だけでなく発見にも特許を与えるのか。
 生命特許については、つい昨日(12月5日)、最高裁判所が実験用のマウス「ハーバード・マウス」(がんの進行が早くなるように遺伝子操作されている)に特許を認めないという判決を下しました。これは、いいニュースです。
 6週間前にカルフォルニアで大きな会議に出た時、みんなは、闘いつづけるべきだと言いました。私は、闘い続けろと言うのは簡単だが、お金がかかるといいました。すると彼らは、資金集めを申し出てくれました。ヨーロッパの団体もそうです。モンサントの責任を追及すべきだと考えているからです。
 個人で巨大企業と闘うのは、大きなストレスです。モンサントには、モンサントに刃向かう者などいない、と面と向かって言われました。巨大企業からの脅しを受け、私はめっきり老け込んでしまいましたが、これからも闘い続けます。


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